医療法人財団

豊島医院

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根拠に基づいた医療

これまで医療は,しばしば権威や経験に基づいた医療が実践されてきました.たとえば,その分野の大家がいうことはすべて正しいと信じられたり,以前から行なわれてきた治療法は間違いがないと考えられたりしてきました.

しかし,現在は 「根拠に基づいた医療 - EBM(Evidence-Based Medicine)」 という考え方が大きく受けいれられるようになりました.それは,大規模な臨床試験などで,実際に医療行為の効果を確認しようという考え方です.そういった科学的根拠に基づいて,医療を実践しようということです.

言われてみれば,ごくあたりまえのことに思われるでしょう.当院でも,日頃より最新の医学情報を収集し,「根拠に基づいた医療」 を実践していきたいと思っております.

体のなかの海

私たちの体のなかは塩水で満たされており,そこで細胞が活動し,生命が維持されています.生命は海で生まれ,進化して魚となり,後に海から出て行きました.陸で生活するには,体のなかに海の環境を保つことが必要でした.

陸では海と違い,塩分を補給することは大変なことでした.そのため,塩分をなるべく体から出さないように,体の仕組みができあがりました.

ところが今,私たちはふんだんに塩を摂取できる環境にあります.過剰な塩分は体に余分な水分を溜め込み,血圧を上げます.

日本人は特に塩分の摂取が多いといわれています.心臓病や脳卒中の原因となる高血圧を予防するために,塩分は控えめにすることを心がけてください.

MRSA

MRSAというのは,正式には「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」といわれ,病院などで抵抗力のない患者さんが感染すると,一般の抗生物質が効かずに命とりになることがあります.

この菌を伝染病の病原菌のように誤解されている方が多いのですが,黄色ブドウ球菌は私たちの皮膚などに常にいて,時に「おでき」をつくったりする細菌で,健康人には特に支障とはなりません.

問題はこの黄色ブドウ球菌が進化して,抗生物質が効きにくいものに変わり,それがMRSAと呼ばれています.最近では,健康な人でもMRSAを持っている人が増えてきています.

MRSAの発生は抗生物質の不適切な使用が原因といわれています.当院では,病状に則して,適切に抗生物質を使用することを心がけています.

熱さまし

風邪をひき熱をだして来院された患者さんは,熱を下げることを希望されます.医師が解熱剤(熱さまし)を処方し,熱を下げることは当然のことと思われてきました.

ところで,どうして風邪をひくと熱がでるのでしょうか?

体のなかに風邪ウイルスがはいると,防御反応として炎症反応がおこり,発熱物質がだされます.発熱は病原と闘うのにある程度必要なものと考えられています.解熱剤を使うと回復が遅くなるともいわれています.また,解熱剤は胃腸や腎臓に負担をかけたり,副作用がでることもあります.

しかし,熱はつらいものであり,体力を消耗させることは確かです.当院では感冒薬とともに解熱剤の頓服も処方しておりますが,必要最小限の使用をお願いしております.

倹約遺伝子

日本人には倹約遺伝子をもっている人が多いといわれます.倹約遺伝子を持っている人は,食べた栄養分を効率良く貯えることができ,また無駄なエネルギーをつかわないという特徴をもっています.

この性質は生物にとっては,大変有利なものです.人類の歴史では,いままでに幾度となく飢饉が繰り返されてきましたが,倹約遺伝子をもっている人は飢餓にも耐えて生き残ることができました.

しかし,飢えのない今の時代はどうでしょうか.倹約遺伝子をもっている人はどんどん栄養を貯えますが,飢饉は来ませんので体重は増える一方で,最終的には糖尿病にいたる恐れがあります.

飢えのない時代は大変ありがたいですが,同時に食べたい気持ちを抑える自制心も必要のようです.